―保健室

ガララッ…

くそ…相変わらず、嫌な匂いだ。

子供の頃から
保健室、特有の匂いが嫌いだった。
鼻の奥まで刺激する強い香りが。


「いらっしゃい♪」

足を組んで椅子に座る男が
オカマみたいな声で言う。

反射的に、睨む。

奴は、ニコニコ嫌な笑みを浮かべながら
その瞳いいねぇ、と言った。

「…お前、公と桐の事知ってるんだろ。」

「だめだめ!!先生、でしょ!君は優等生君なんだから、そんな言葉使いしちゃ駄目♪」

女みたいに早口で
媚びるような口調。

…この野郎、馬鹿にしやがって。
舌打ちしたい気持ちを堪えた。

「…まぁ、いいよ♪君の事も知ってる。原 里央君。推薦蹴って、何してるんだか。」

そう言って、椅子から立つと、ゆっくり俺に近づいてくる。

気味悪い奴に、身退きたい気持ちをぐっと堪え、奴を見た。

硝子玉の様な冷たい瞳に
背中がぞっとする。

奴は長くて細い指先を
俺の頬にあてる。

死んでんじゃないか、ってくらい冷たかった。

「…君は、桐をもう一度マウンドに立たせたいか?」