雨の日にしか
泣かなくなった…


雨の日にしか
泣けなくなった…



あの頃の俺には
野球がすべてで


失う事なんて
考えられなかった…



砂の匂いも
金属音も
ボールの感触も
空に放たれた白球も
そして
俺の居場所だったマウンドも


すべてが
愛しくて


野球しか、無かった。
野球しか、いらなかった。


…だから

もっと責めろ。

もうこれ以上ない位
俺を無茶苦茶に壊して…くれ―


野球が


もがけばもがく程
絡みついて離れない。



野球選手から
野球を奪った


この肩が
この身体が
この足が


野球をしたいなんて


そんな事
俺は許さない。





雨が俺を叩く…。


俺を消し去ってくれ。
俺を溶かしてくれ。


野球が出来ない俺なんて


いらない、から…。