難しい恋は遠慮させてください

先輩と話しているうちに日が暮れて、居残り練習もそろそろ終わりにしなければいけない時間になった。

私と先輩はドラムのたいこやシンバルを一つずつ片付けていく。

最後にドラム本体が残った。

「じゃあ、私持っていっちゃいますね!」

「えっ!?重いから俺が運ぶよ」

先輩は急いで私の前に回り込んだ。

「大丈夫ですよ?重いもの運ぶの慣れてますから」

私はそういってドラムに手を乗せた。

「いやいや、俺男だし女の子に重いもの持たせられないよ」

焦ってドラムを持ち上げた先輩の足に、下の大きなバスドラがゴンッと鈍い音を立ててぶつかった。

「…。」

足の痛みのせいか黙り込む伊島先輩。

「やっぱり私が持ちますよっ?」

私は心配になって反対側からドラムをつかんだ。

それでも先輩は首を横に振った。

「でも…」

「じゃあ二人で持っていこうよ」

先輩は恥ずかしそうに目をそらしてつぶやいた。

「先輩…今すっごい妥協しましたよね?」

悪いとわかっていたけど私は笑ってしまった。

そしてもう一度ドラムを反対側からつかんだ。