難しい恋は遠慮させてください

「もう一回叩くからちゃんと見ててね?」

伊島先輩は首筋をかいて照れ臭そうに笑った。

そして、また私の前に腕をのばしてきた。

今度は恥ずかしくてもちゃんと見なくちゃ…

私は覚悟を決めて前を見つめた。

長めの前髪から時々見える小さめの先輩の目。

目元にある涙ボクロ。

先輩からほんのり感じるいい香り。

先輩の存在全てに私の鼓動は早まり、音が大きく騒ぎはじめる。

今はもう、体全部で鼓動してるぐらいに心臓が痛い。

━━やっぱり…無理かも…

ギブアップ寸前。

目をそらそうとした瞬間。

先輩の耳が真っ赤なのに気が付いた。

よく見ると先輩の頬も真っ赤に染まっていた。

それに気が付いた瞬間。

すごく安心できた私がいた。

緊張していたのは私だけじゃない。

先輩もだったんだ。

それがわかっただけで、私は先輩が見せてくれているお手本をちゃんと見ることができた。

感じている気持ちは一緒。

これだけですごく安心できたおかげなんだと思う。

「はい。やってみて?」

「はい!わかりました!」

心に余裕ができた私はとびきりの笑顔で先輩に言うと、先輩はもっと顔を赤らめて目をそらした。