なんで、...なんで抱きしめるの? ただの遊びのくせに。 ちゃんとした相手がいるくせに。 やめてよ... 優しく抱きしめたりしないで... そう思うのに。 この腕を振りほどいたりなんてできない。 抱きしめる腕がこんなにも嬉しい。 あたたかい彼の体温がたまらなく愛しい。 込み上げるモノをなんとか抑えながら、大きな体に腕を回した。 「...泣いてた?」 少し体を離して、あたしを見つめる瞳。 そして、うっすらと残った涙の跡に、ひどく優しい手つきでそっと触れた。