「あなたの考えは、間違ってると思います。」 あたしの言葉に、女の人は振り向かなかった。 怒りもせず、ただ静止しているだけだった。 ――あたしが感じたもの。想い。 それはホンモノで。 まやかしなんかじゃない。 それだけは、否定したくない。 これだけは、はっきりと言えるんだ。 エントランスホールに、再び静寂が訪れる。 まもなくして、女の人はエントランスを出て、去って行った。 また、あの黒いピンヒールを鳴らして。