ため息に、哀


部活が終わった後、俺はゆっくりと部室に戻り、時間をかけて着替えた。

いつも高橋先輩は、片づけがあるから帰る時間が俺たちよりもかなり遅い。

なんだかんだ理由をつけて薄には先に帰ってもらい、人のいなくなった部室でじっと時間が過ぎるのを待とうと思った。

だけど、いてもたってもいられなくなり、結局は部室を飛び出した。


クラブハウス棟の階段を駆け下りたところで、俺は横から歩いてきた人とぶつかりそうになった。


「わっ、すいませ、」


なんてタイミングがいいのか、そこにいたのは高橋先輩だった。


「あっ、小野崎くん。お疲れ様」

「お、お疲れ様です」


いきなり飛び出してきた俺に驚いたのか少し見開いていた目をふんわりと細めて、先輩は微笑んだ。


この笑顔が好きだ。

できることなら、俺が独占したい。

きっとこれが最後のチャンス、もう次はない。