俺の方へ戻ってきた薄は、ほら簡単だろとでも言いたげに、横目で俺を見てきた。

俺は紙コップの中のコーラの泡がはじけるのを見つめて、その視線を避けた。


「薄こそ、高橋先輩のこと好きなんじゃねえの?」


驚くほどふてくされた声で、俺は薄に訊いた。

違うのはわかってる、さっき自分でも思っていたんだから。

それでも女々しい俺は、確認せずにはいられなかったんだ。


ふ、と薄が軽く笑ったのがわかった。



「だったらどうする?」


今までに聞いたことのない、不敵な、楽しそうな声で薄が言った。

にやりと唇の端を上げて、涼しげな目を少し細めて。

なぜか俺がドキッとした・・・・のは一瞬のことで。


「え・・・・マジ?」


呆然として訊き返す俺に、さっと笑みを消していつもの薄に戻った。


「そんなわけねえし。あの人に張り合う気ないから」


その視線の先には、デレデレととろけそうな顔で高橋先輩を見つめる、須賀先輩がいた。