別に……伊勢谷が出るからって、どうって訳じゃないし。

伊勢谷だって立派な被害者だし……。

加害者なのは、他ならぬ私……かな。

その時、いきなり頭に暖かい温もりが感じた。

びっくりして顔をあげると、そこにはニヤニヤ笑ってる伊勢谷が立っていた。

「……なに?」

「いや、掴みやすい頭だな、と思ってな」

伊勢谷は私の頭をくしゃくしゃしてきた。

おかげで、髪の毛がぐちゃぐちゃになってしまった。

あの、伊勢谷に抱き付いて泣いた次の日。

気まずいだろうと思っていたら、それほど気まずくなかった。

伊勢谷から元気に声をかけてくれたから。

私は最初びっくりしたけど、構わず、おはよう、と言った。

いつまでも立ち止まっていたって意味ないから。