言い終わり、下を向く。

ごめんね。

困らせて。

「…忘れる事は、出来ないな」

「……え」

「今篠田が言った事は真実だろ?」

「…うん、そうだよ」

「……人は、過去からは逃げられない……か。面倒だな」

伊勢谷の腕がのびてきてたが、途中で止まる。

私は下を向いていたからわからなかった。

「……ただ、消えるな」

そう言って、腕を引っ込め教室から出て行った。

[……ただ、消えるな]

……涙が、溢れた。

こんな、一言だけど単純に嬉しかった。

「う、うぅ……あ、りが、と……」

泣きながら、お礼を言った。

誰もいない、教室で。