赤外線をセットしようとした俺は、誤ってメールボタンを押してしまった。
なんだ、めちゃめちゃメールしているじゃないか。
そこにあったのは、大量の男からのメール。
ほんの少しだけ、俺の中では嫉妬心が芽生えた。
そんなこと思える立場の訳でもないのに。

おっと、赤外線…赤外線…っと。

『ハイ、完了。』
『あ、ありがと!!』
『じゃ、じゃあね!!』
『おぅ』

どうしてか理子はすごく急いでいた。
さっきは若干の曇りぎみなだけだった顔が、今度は雨が降っているようになっていた。
最後の『じゃあね』の切り替え方は早かった。
何かに追われているかのように。

あの時、何故俺は何も言えなかったのだろう。
2年もしたら携帯なんて赤外線なんて動作、単純なのだからできるはずだということを。

そして、異常な数の未開封の男からのメールを。

もし、もし俺があの時相談に乗ってあげれば。
そしたら君の荷物の少しは少なくなったのかな。

気付かなくて、本当にごめんな…。