少し、優しすぎたのか?
俺はもう少し強く言うことにした。
『は?お前に俺の何が分かるんだよ!!だいたいな…』
『………なーんて言える立場じゃないんだけどね。あたし。』
『…?』

さっきの強さはどうした。おい。
目の前にいる女はさっき居た気の強い奴とはまるで別人だった。
弱々しい顔でこちらを見ている。
その顔に負け、俺の口はいつの間にか動いていた。

『俺な、死にたくないんだ。タブン。』
今のさっき、歩道橋から落ちようとしたやつがこんなこというなんておかしいと思われる覚悟で。

『あたしだってわかんないよ。』
そう言うと今度は、
『あたしだって死にたい。』
女から返ってきた返事は俺の予想と180度違うモノだった。
言葉を失った。
俺より、深い何かがあるように見えた。
『あっごめんね!!いきなり変なこと言っちゃって!!』
『あ、いや、別に…。』
『あたし、理子って言うんだ!!よろしくね!!ここら辺に住んでないからもう会えないかもだけど…。』
がんばれ、俺。
『俺の名前は、羅斗。俺は理子にもっと会いたいよ。もっと理子のこと知りたいよ。』
思った通りの反応だった。
びっくりして、きょとんとして。

もう一度、勇気をふりしぼることにした。

『理子…メアド、携帯。持ってるか?』
『あ、うん。でも、赤外線どうやるか、忘れちゃった…ごめん。やってくれないかなあ?』
『最近買ったの?』
『ううん。中1だから…2年前かな。』
『俺も中3』

この時からおかしかったことに何故、気付かなかったのだろう。