コンビニの近くには歩道橋がある。
ふとその歩道橋に目をやる。

歩道橋を見るなりあたしはびっくりした。
人が歩道橋から落ちそうだったのだ。
雨が降っているのだが、傘などさしている様子もなく何故か階段のテスリの上に立っている人の姿。

行くしかない。
助けなければ。
あたしの中の何かが反応したのか、あたしは反射的にそこへ向かった。

落ちる瞬間には何とか間に合った。
『待って!!』
あたしは無我夢中で、身体を腕いっぱいにわしづかみにし、おろした。

助かったのだ。
なんとか、一つの命が救われた。

彼の口が動こうとした。
お礼を言われるかと期待していた彼の口からは
『どうして俺を助けたんだよ?』
『はあ?』
『俺なんて死ぬべきだったのに!!どうして助けたかって聞いてるんだよ!!』
彼は叫んだ。
歩道橋を利用する小学生がこちらに目を向ける。
『よくわかんないけど…移動しよう?ね?』
ここではダメだ。ここでは話せない何かがある。真実は何かわからないけれど、少なくともあたしはそう、察知した。
『どうせ俺は今から死ぬんだ!!どこで話そうが関係ねーだろ!!』
『死ぬなんてこと言っちゃだめだよ!これから楽しいことが待っているかもしれないんだよ!?』

自分でも何を言っているのかわからなかった。
確かなのはあたしが言える立場では無いことだけだった。