『理子―。おばあちゃん家行かない?』
『いいよ。』

その時は少し気分転換になるかと思い、適当に返事をしただけだったのだが、
今、この時のことを思うと、ここでOKしていなかったら今のあたしは居なかったな。
笑う、なんて動作できなかったんじゃないのかな。

その時のあたしは何も思わず車へ乗り込む。
おばあちゃんの家はとなり町にある。
最近はおばあちゃんが少し体調をくずし、毎週のように行っている。

まどの外を見ると雨が降っていた。
ポツ、ポツ、と会話のない車の中へと雨の音が響く。

雨はいいなあ。
降ってきたらすぐに消えてしまう。
気まぐれに出てきて、気まぐれに消えることができる。
そんな雨が羨ましいよ…。

そんなことを思っているとお母さんがブレーキをかけ、ハンドルから手を離した。

『ついたわよ。』
よそ事を考えていたからか、いつもより着くのが早く感じた。

チャイムを押す前におばあちゃんが玄関で待っていた。
『やぁやぁ。よくきたねえ。待っていたよ。』
おばあちゃんはだいぶやせた。
病気のせいなのか、昔はふくよかな方だったおばあちゃんは痩せたのだ

そんな姿を見たくなかったこともあり、あたしは家を出て買い物へと出かけることにした。
『ちょっと行ってくる』
『ん。』

何を言っても反応があまり無い母親。当然いじめの事などしっているわけもない。
買い物、と言っても近くにはコンビニくらいしかない。
お菓子を適当に買って、かえってテレビでも見ようかな、とあたしは考えていた。