そう考えると、私は冷静というよりも冷酷なのかもしれない。




なにしろ自分の命の危機だと言うのにお・か・しを順守しているのだから。




最後の“喋らない”だけは守れていないけれど。




「殺害に当たって君の過去を少し調べさせてもらったんだけどさぁ……」




「はい。面白い発見でもありましたか?」




「うん。君の両親も殺人事件の被害者だったんだね」




確信めいた問いに、私は肯定するでも否定するでもなく微笑んだ。




その件に関して新しい反応は期待できない。




私にとってそれは、『苦い思い出』にさえ昇格できない程度の小さな過去に過ぎないのだ。