癒えて痛みだけは感じなくなった傷痕が、まるで忘れようとした私を咎めるかのように疼きだす。 幸せになんてなれるはずがない。 幸せになっていいはずがない。 私は永遠に十字架を背負いながら足掻き続けるしかないのだから。 汚泥の中で、届くことのない平穏に手を伸ばす。 もう少し、もう少しなんだ。 あとちょっとなのに、その数センチが私には大きすぎて。 「穹、穹!」 異変に気付いた藍が私を抱きかかえながら、肩を揺する。