古い記憶を読み返していると、小さな笑いが耳に届いた。 どうやら男のツボに入ったらしい。 快活な笑い声をあげて、私を解き放った。 「?」 思わずきょとんとして彼を顧みればそこでは男が恍惚とした表情を浮かべていた。 「気に入った」 「は?」 「君は殺さないことにしたよ。どうせロクでもないやつの依頼だ」 「それはどうも……でも、あなたの信用が落ちたりしないんですか?」 「元々信用なんてされてないさ」 それだけ言い、男は軽やかに私の前に降り立った。