歌い始めたんだ…。


澄んだ歌声…

きれいな音程…


「すげぇ…」

芸術とかに興味のない俺が、そう思わず呟いていた。

《別れ際に…魚住の一面を知るなんてな…》


歌い終わると、一人の女性が海から顔を出した。


「姫様、迎えに参りました。」


「ご苦労様。

……じゃあ海野君、さようなら…」


「ああ…。」

海に近づく魚住の手首にはあのブレスレットは無かった。

いつから外してたんだろうか…。