「砂糖1とミルクは2つ。流石煉だ、分かってるね」

「何年の付き合いと思ってんだ」

「生まれてから今までだから16年とちょっとかな」

「そんなになるか…なんか嫌だ」

「なによ、言い出したの煉じゃん」

「美姫のわがままに16年も付き合ってるのかと思うと複雑すぎる」


その煉の言葉に頬を膨らませ、制服のネクタイを緩めている煉を見ると、扉からのノック音。

慌ててネクタイを締める煉を見ながらスカートや身だしなみを直し、扉へと寄る。


「はい」

「失礼します。入学式の資料をお持ちしました」

「…なんだ、梓か」


扉が閉まるのを確認してから私と煉はため息をつく。資料を抱えた同級生の彼女は苦笑いをした。


「2人とも気を抜きすぎ」


今日はいつ誰が来るか分からないんだよ、と言う彼女の名前は久遠梓。彼女も生徒会メンバーで書記、2年A組。

…というより、2年A組は生徒会メンバーしか入れないクラスなので必然的に彼女もA組なのだ。


「だってあの話し言葉使いづらいんだもん」

「…私はもう慣れっこだけど」
「だめ、あの言葉には慣れない」

「俺も」

「そういう割には外では完璧だよね、2人とも」

「「努力してますから」」


クスクスと笑う梓は政界一の権力者の娘。お嬢様育ちなので、お嬢様の振る舞いが普通に出来る子だ。

見た目は高い身長、細い身体、ほどよい筋肉に黒の短い髪、とスポーツ少女に見えるけど。


「俺たちはお前と違って根っからの良いところの家の育ちじゃないからな」

「そうそう。極普通の家育ち」


サラリーマンの父とキャリアウーマンを貫く母を持つ私と、サラリーマンの父とパートをしている母を持つ煉はこの学園唯一の“普通の家”育ち。