それに、梓と大地は婚約してる。小さい頃からの許嫁で、高校生になって婚約、となったらしい。本当に籍を入れるのは大地が18歳になる来年だけど。
私からしてみれば、許嫁がいて婚約してて来年結婚、と言うのは想像しづらいけど梓と大地なら何となく納得出来る。
なんだかんだで仲良いんだよね、あの2人。
「美姫、そろそろグラウンドに行くわよ」
「うん。梓、ジャージは?」
「ちょっとうっかりしてて、忘れたの」
「梓が忘れ物なんて珍しいね」
授業前となり、梓は着ていたパーカーを脱いで半袖となった。いくら春とはいっても寒そうだな、なんて思っていたら大地が梓の頭にジャージを被せた。
「俺の着てなよ」
「…別にいいわよ、そんなに寒くないし」
「でも少しは寒いんでしょ?大丈夫、俺は寒くないから」
「…ありがと」
「どういたしまして」
梓には大きすぎるジャージを被り、優しそうに笑う梓。
幸せそうで、こんな2人なら親の決めた結婚でも良いものなのかもしれない。
そう思っていると予鈴の鐘が鳴る。グラウンドまでは走って5分。ギリギリだ。
「急げ!」



