夜色オオカミ





座り込んだままで呆然と見上げると



あたしの前に立っていたのは、……紫月さんだった。



紫月さんは無言のままに十夜に近づき、十夜の胸に顔を近づけた。



そして静かに顔をあげて、十夜の顔を見つめたまま…ポツリと呟いた。



「…本当に、どこまで馬鹿な方だろうか…貴方は…」



自分の為に倒れた十夜をただじっと見つめ…微かに眉を寄せた。



その表情は、まだ残る涙の跡があるからか…泣いているようにも…見えた。



「………。」



「………!」



紫月さんの紫色の瞳が、あたしに向いた。



昇り始めた朝日が紫月さんの繊細な美貌を照らす…



線の細い身体は十夜同様に怪我だらけで、あちこちに血の跡があった。



だけどその顔からは、暗い影のようなものが消えているみたいに見えた。



だって



紫月さんは、あまりにも真っ直ぐにあたしを見つめるから……。












「……恐らく、私ならば…若君の時を……動かせる。」



「………!!」