「祈咲…?」 「信じて…十夜。」 怪訝な声を出した十夜にそれだけ言ってもう一度ぎゅっと抱きつくと、そっと離れて面白そうにこっちを見てる紫月さんに向き直った。 「最後の別れは終わったか? 終わったならばそろそろ待ちくたびれたことだし……始めさせてもらう。」 ゆっくりとあたしに向かって足を進めるその表情にもう面白がっているかのような色はない。 あたしにだけ焦点を向けた狼の背には、ゆらりとたち昇る殺気が目に見えそうなほどだった。