――――ザッザッザッザッ……!



「姫君!こっち…!」



草木を掻き分け、あたしを先導してくれる紅ちゃんと蒼ちゃんの後を必死に追う。



十夜と紫月さんはあたし達が話し合っているうちに真神家の敷地の奥深い森の中へと移動したようだった。



双子ちゃんのよく利く鼻を頼りに月明かりの元、鬱蒼とした森の中を走った。



ピシピシと伸びた草木が顔や腕、足なんかのむき出しの部分を叩いてずいぶんと擦り傷だらけだけど構ってなんかいられない。



とにかく無我夢中で足を動かした。



ずいぶん深くに入ったところで前を走ってた紅ちゃんと蒼ちゃんの足が止まる。



二人はぐるぐると歩き回り、鼻を鳴らす。



そして困り果てたようにその場に立ち尽くした。



「どうしたの?」



不安になったあたしの問いかけに紅ちゃんが弱く頭を振った。



「別の匂いに邪魔されて、紫月と若様の匂いがわかんなくなったんだ…。

蒼!わかる!?」



「ダメ!甘い匂いが強すぎる…!」



蒼ちゃんも焦った様子で首を振った。








甘い匂い……?








その言葉に慎重に息を深く吸い込んだ。