「誰の為に若様が戦っていると思っているのですか…っ?

あなたを危険に晒すだけの行動を許すわけがない!」



苛立ちを必死に抑えながら、それでも抑えられない感情に声を荒げる橙枷さんを初めて見た。



常に冷静な彼すら心を乱している…。それくらい今は切迫した状況なんだ。



「皆堪えているのです。

周囲には屋敷中の人狼が紫月の喉元に食らいつきたいのを堪えながら潜んでいる。

人狼にとってあり得ない裏切り方をした紫月に皆激しく憤りを感じている…!」



ギリ…ッと牙を噛みしめながら、橙枷さんはやるせない胸の内を明かした。



絆を重んじる真神一族にとって…許せない裏切り。







でも…










――――だからこそ…だ。









「あたしは…二人を戦わせたくないんです……!!」



「……!!」













だからこそ、十夜は一人で行ったんだ。