『兄さん……どうか、十夜のためにも目を覚まして…』 雛菊を帰し、返事のない扉に語りかける。 返事どころか音すらしない 重厚な扉の向こう…… 『………。』 溜め息を溢し、そっと背を向ける。 気配すら感じさせないこの奥で 『……ぃ…ない…。 ユリは、…死んでいない……。 俺が…きっと……きっと……!』 兄はもう…… 惨劇の未来へと 足を踏み入れていた。