「十夜、全てを聞きたいんだね?」



「………!」



穏やかなお父さんの声に、十夜の肩が微かに揺れた。



その一瞬に様々な葛藤が見えた気がした。



だけど十夜はぐっと拳を握りしめ、強い夜色に輝く瞳でお父さんを見据えた。



「……聞きたい。

俺のことも、親父の…本当の、気持ちも…」



最後の言葉は小さくて、聞き取りにくいものだった。



だけど、お父さんは眩しいものでも見るかのように十夜を見上げた。



「君は…ずいぶんと大きくなったなぁ……。

その黒い髪も瞳も……


…、本当によく似てる……。」









お父さんの赤い瞳は



十夜を通して別の人を見ていた。



それは懐かしさと切なさをない交ぜにしたどこか寂しそうな眼差しだった。