「…………。」



「…………。」






まるで、お互い、この夢が覚めてしまうのを恐れているかのように動けなくて



ただ黙って見つめ合っていた……。








「………祈咲…」



「………!」



十夜の前足が、ゆっくりとあたしに向かって踏み出されたその時――









――――ガチャ……



「………!?」



ゆっくりと…この狭い部屋の扉が開き



「グルル……」



その瞬間、十夜は黒い毛皮を逆立てて、地を這うような低い声で呻いた。



「………!?」



あたしは、目を見開いて固まった。









「……そう、威嚇しないでくれないか?

今のままで黒き狼とこれ以上やり合う程、馬鹿ではないのでね。」



「………。」









現れた



――――紫色の狼に