「まったく忌々しい…………。
これも黒き狼の能力の高さというものか。
運命すら―――私の邪魔をする。」
どこか遠くを見ているような暗い瞳で…呟くようにそう言って
紫月さんからは相変わらずなんの感情も読み取れなくなった…………。
だけど、それが余計に恐ろしく感じる。
「…………。」
「…………っ!」
その瞳を向けられただけで、情けないくらいにビクリと震えた。
それに紫月さんはどこか満足げな顔をしたけど、それ以上あたしに近づいて来ることはなかった。
それはあたしに微かな安堵をもたらしたけど
「何…、いずれは消える。
その時の楽しみが延びただけだ。
所詮君は籠の鳥……。
私の愛しい花嫁の魂を宿している器(ウツワ)だ。」
「…………っ!?」
――――酷薄な笑みは
あたしにその言葉の意味を嫌でも想像させた……。
やっぱり、紫月さんにとってあたしは……消えた姉妹の身代わりなんだ。