一秒でも早くここから逃げ出したい。 無我夢中で階段をかけ降りていると、誰かが私の名前を呼んだ。 「萌香ちゃん!?」 「!!翔さんっ…」 走るスピードを緩めると、翔さんは私の顔を見て目を見開いた。 「…萌香ちゃん…何かあった?」 「…っ…」 自分の目の下に触れると、指先が濡れた。 「…なんでもないですっ!!」 「萌香ちゃん!」 翔さんの声にも答えず、私はまた階段をかけ降りた。 誰にも話したくない。 口に出したくない。 あの状況を説明したくない。説明できない。 思い出したくない…。