トイレから出ると、さっきの場所に恭吾の姿がなくなっていた。
「…あれ?恭吾?」
辺りをキョロキョロ見回しても、視界に恭吾は映らない。
もしかして…あたしがトイレにいるのが長すぎて帰っちゃったとか?
イヤな予感が頭によぎる。
でも…しょうがないよね。
仕方なく帰ろうと後ろを向いたとき、ほっぺに冷たさを感じた。
「ひゃっ!冷たっ!」
とっさに振り返ると、ジュースを二本もった恭吾があたしを見下ろすように立っていた。
「なーに勝手に帰ろうとしてんの?」
「いや…それはその、恭吾が先に帰っちゃったと…」
最後まで言い切る前に唇に冷たいジュースが当たった。
「っ…」
あたしは、唇に当てられたジュースを掴んで恭吾を見上げた。
「ちょっと…!!」
またもや言い切る前に遮られてしまった。
だけど今度は、フワッと香水の臭いがして……。
それで…唇に暖かいものがふれた。
