「ちゃんと乗せとけよ?…ちょっと走るから。」
次の瞬間にはすでにあたしの手は恭吾によって握られていて、ぐいっと引っ張られた。
水たまりを踏む度にパシャパシャと音が鳴り、水がかかった。
普段だったら気にするはずなのに、そんなことも気にならないくらい夢中で走った。
「入るぞ…」
足を止め息を切らしながら恭吾が呟いた。
つられてあたしも足を止める。
どうにか辿り着いた大きめなデパートにびしょ濡れの学生が2人。
…なんて思われるんだろう。
ふと視線を感じて、よこを向く。
そこにはニヤニヤしている恭吾がいて、とっさに視線をはずす。
「鈴…」
もう一度恭吾を見ると、少し顔を赤らめた恭吾がいて
「ブラ透けてる」
そう耳元で囁いた。
「きゃ!変態!えっち!バカバカ!」
顔が熱くなり、あたしは必死で胸のあたりを隠した。
