はるか昔から、人々が抱えたであろう悩みのひとつにこんなものがある。

 愛に永遠はあるのだろうか。


      †††††


 俺が再び、美琴の眠る明青霊園に舞い戻って来たとき、時刻はすでに夕方を過ぎていた。

 用事をこなしつつ、急いで車を飛ばしてきたので危うく婆さんをひき殺すところだった。

 とにかく、美琴のもとに早く行かなくては。

「あれれえ?また来たんですね~」

 竹ぼうきを持って掃除をしている姉ちゃんに声を掛けられた。

 12月だというのに、薄っぺらい白のワンピースひとつで平然としているが寒くないのか。

「また……って、あんたに会った事あったっけ?」

 ふと昼に会った美琴のおばさんの言葉を思い出した。

 ああ、そういうことね。

「あの子の事、許してあげてくださいね。あなたを気遣ってしたことなんです。きっと」

 ワンピースの姉ちゃんは、優しい笑みを浮かべながら言った。

「全然、気にしてないぜ。なあ、麦わら帽子は今日はかぶらないのか?」

「うふふっ。あれはたいせつなひとにプレゼントしてあげたんです」 

 子どもみたいにはにかんで、元麦わらの姉ちゃんは笑っていた。

「そうか。そりゃ残念。さぞかし似合っていただろうから、一度見てみたかったんだけどな。じゃあ、俺は美琴んとこ行くから」

「ええ、頑張ってくださいね」

 頑張るような事かよ。

 そう突っ込もうと思った時には、おせっかいな姉ちゃんは既に消えていた。

 俺は頭の中で礼をしつつ、美琴の眠る墓へと向かった。