オルゴールから流れるのは、美しく、そしてどこか物悲しい旋律。
「これ……、ショパンの『別れの曲』ね……」
覚えている。
美琴がピアノコンクールで優勝したときの曲だった。
でも、別れの曲だなんて……
ちくしょう、縁起でもないこと言いやがって。
とにかく、手紙を読まなければ。
†††††
浩介へ。
キミがこの手紙を読んでくれる事を信じて、今のわたしの想いを記して置くことにします。
わたしは正直者だから、キミにもいつも言いたい事を言ってきたし、嘘もついた事はなかったけど。
ごめんなさい。
たったひとつだけ、キミに嘘をついていた事があります。
こないだ盲腸で入院したって、言ったよね?
あれ、嘘だったんだ。
本当は、白血病。
言ってなかったけど、中学の時もそれで入院した事があって、治療したんだけど。
こないだ、また再発しちゃって。
で、言われちゃったんだその時。
あと数ヶ月の命です。
ってね、まるでドラマみたいでしょ?
自分が悲劇のヒロインになるなんて、思いもしなかったなあ。
似合わないよね?
キミはわたしがなんで自殺しちゃったんだろう、って思ってるだろうけど。
わたしは最後の瞬間まで、幸せでいたかったの。
キミに愛される喜びを噛みしめながら、逝きたかった。
もし、わたしが白血病だって事をキミが知って、それでキミが悩んだり苦しんだりするのを見たくなかったの。
ただ、いつものように明るくて、笑っている、そんなふたりのままでいたかった。
だから、自分からお別れする事にしました。
わがままで、ごめんね。
本当はもっと、長生きしたかった。
ふたりで、生きたかった。
でも、運命なら受け入れなきゃいけない。
これも、ドラマとかでよくある言い回しだけど、でも言うね。
キミといっしょに過ごした時間は一年にも満たなかったけど、それでも今までのわたしの人生の中でいちばん幸せな時間でした。
