悲劇の主人公にも、その先の物語が待ち受けている。

 それが再び悲劇になるのか、あるいは喜劇になるのかは、人生というページをめくるまではわからないのだ。



 昔話の続きをしよう。

      †††††


 W大学に入学した俺は、心理学科の講義でひとりの女と出会う。

 眼鏡の似合う、知的な才女といった印象の女だった。

 当時の俺は、美琴が死に至ったその心境を知りたいがために、心理学を学んでいたのだ。

 講義の最中、ふと隣に座ったのをきっかけに、その女との交友が始まった。

 生真面目だったそいつは、俺の影響なのか、いつしか煙草を吸い始め、ギャンブルにまで手を出すようになっていった。

 そいつとの付き合いで、俺は美琴を亡くしたショックを癒す事ができた。

 そして、何の因果かそいつは卒業後、俺の母校の学校医になるのだった。





「しかし最近の女子高生は乳がでけえな!さっきツインテールのいい感じの娘がいたんだけど、口説いていいか」

「1年ぶりに会った第一声がそれかいっ!」

 こいつがその、大学時代の盟友である。

 ぶっちゃけ、元カノでもあったりする。
 
 もう、別れて3年になるけど。

 とにかく、俺は母校である明青高校の保健室内にいた。

 しかし、なんなんだこの常軌を逸した煙草臭さは……

 現在禁煙中の俺への嫌がらせですかい。

「で、ツインテール巨乳ちゃんに、大人の渋み溢れるこの俺の魅力を体当たりで教えてやっていいのか?」

「いいけど、あの子いま同棲中よ~。ちなみに現在の2年B組クラス委員長です」

 2Bの委員長……。

 美琴と同じか……。

「同棲かよ!そりゃ毎日毎日、夜中は祭りだワッショイ!ってにぎやかだそりゃよかったね!って感じだな」

「まあ、同棲って言ってもお互いの親も同居してるんだけどね~。……あんた無理してない?あの子の事、思い出したの?」

 さすが、校医兼スクールカウンセラーの喜多原夕果さまには、なんでもお見通しってわけか。