平穏

しばらく
島は平穏だった
というより
もとよりこの島は平穏なはずなのだ


記録をさかのぼりながら
ミキも平穏に
島の昔を覗き見た


レンはもっぱら世の噂話やなんかを持ってきた

世は、島より華やかに聞こえたが
島が大きくなったようなものだろうと、ミキは思っていた

ミキは世を知らないから想像するほかない

知り得ることは
最近レンがくれる噂話と母に植え付けられた外への恐怖


ミキは島に来て
はじめて太陽を知った
空はいつも月がでているのだと思っていた
家移りはいつも夜だったし
ほかは一度も外に出た記憶はなかった

暮らした場所は
いつも暗い場所

だから、幼い頃ミキは月が好きだった