「おい、翔太 おい」


「お い っ て 」


「聞いてんのかー」



3回目でようやく翔太は返事をした

「聞いてる」

「数学を?」

「違う、お前のその気持ち悪い小声」

「聞いてんなら反応しろっての」

「はいはい、なに」



翔太は体を半分ひねって

ようやく後ろの席の智弘の顔を見た


「ラ、イ、ブ。チ、ケ、ッ、ト」

智弘は一言一言わざと間を開けて言った


「あぁ〜、まじごめん」

智弘が飽きれ顔になる


「お前やる気ないだろ」


「いやマンマンですよ」

翔太がはにかみながら言った


翔太と智弘はバンドを組んでいる

翔太がギターで智弘がボーカル。
隣のクラスの昭がドラム。

バンドと言っても派手なロックではない


自分で言うのもなんだが、ただでさえ真面目な自分達だ。
智弘はもっと激しい歌が歌いたかったが

翔太や昭が好きなバンドは個性的なゆるいバンドだった

それでも智弘は歌えれば別によかった

しかも仮にもボーカルだ。
それもそれで気分は悪くない。

「だってお前だけだし、チケット裁いてないの。
ガラガラだったらどーすんだよ〜、ただでさえ無料チケットばらまいてるよなもんだってのによ〜」


「いやいやごめんってちゃんとやるよ」


「頼むよなまじで〜」

智弘はそう言いながら翔太の顔を覗きこんだ


あっ……

智弘はおまけで睨むつもりだったが、翔太の目を見て
はっとした


片方の目の辺りが痙攣している


…チックだ


初めて見たわけじゃない

翔太は入学したときからこうだった