純情オオカミ








「ちゃんと起こしてきた」


その人は私の目を真っ直ぐ
見ながらこっちに戻ってきた。


「…あなたがやったんだよね?」

「ん?」

「…えーと、ケンカしたの?」

「あー、そうだよ」


ためらう事もなくきっぱり答える。

私は、なんで?と聞けずに
「…そっか」とだけ返した。


「じゃあ私行きます…
邪魔してすいませんでした」


そういって私が体の向きを変え
帰ろうとするといきなり腕を掴まれる。


「え、ちょっと、なんですか!」


私は慌てて掴んでいる
手を振り切ろうとする。

でも力がとても強くて
私の力じゃ到底及ばない。


「名前教えろ」

「…何でですか?」

「いいから教えろ」

「ひ、広瀬 亜緒です…」

「分かった、ありがと」


腕を離したその手で私に
向かってばいばいと手を降った。


名前を教えちゃった…。
男の子って本当に強引。