「…ねぇ」

テレビの音しかしないなかで凛と澄んだ遠矢の声が響く。

「なーに」

可愛げもなくただ、返事をしたあたしを温かい腕が後ろから回される。

「好き」

「…ん」

「好き」

「……」

「…愛してる」

耳元で、優しく囁かれれば
幸せすぎて泣きそうで。

俯いて隠した赤い顔も
きっと意味ない。


「…ねぇ、世界で一番好きだよ」

不器用なあたしも
精一杯愛を伝えてくるこの気まぐれな野良猫が好き。


「…知ってる」


可愛げのない返事でも満足したことは、
あたしを抱きすくめる遠矢の腕が伝えてた。