その日の夜、あたしは夢をみた。
真っ白な、世界。
それにだんだん色がついてきて、川がでてきて、草が生えてきて、花もでてきた。
「綺麗…」
なんだろう…見覚えのある景色だった。
記憶をたどるあたし。
そうだ…ここはお姉ちゃんといつかきた…。
〔ビルが、だんだん増えてきて、道もコンクリートで埋められてて、川もゴミですごく汚くなってる。でもここだけは、いつみても綺麗だよね―〕
ここに来たときお姉ちゃんが言った言葉が頭のなかでもう一度響く。
〔また、一緒に来ようね〕
あの時交わした約束。
もう、約束が果たされることはないけれど。
あの日、お姉ちゃんがいじわるして隠れた。
花に夢中だったあたしはお姉ちゃんが隠れたのに気づかなくて、後から必死に探したっけ。
あたしが泣くと、お姉ちゃんが笑いながらでてきてくれた。
いないとわかっていながらも、探してしまうあたし。
懐かしいなぁ…。
ふとあの日お姉ちゃんが隠れていた場所に目をやる
人影が…かすかに見えた。
何故かそこだけに霧がたちこめていて、よく見えない。
少しずつ霧が晴れてきて、奥が見えるようになると、その人影の正体があらわになった。
「おねえ…ちゃん…?」