どうして泣いているの?
今、別に悲しいことなんてなかったじゃん
逆に、桂が何も言わずにあたしの話を聞いてくれて、微笑んでくれて。
過去を思い出して泣いているの?
でも…悲しくなんかないんだ…
今あたしの心のなかは、温かい言葉と安心感ですごく満たされているのに―?
「あたし…なんで泣いて…悲しくなんかないのに…」
あたしがそういうと桂はまた優しく笑って、
『沙耶…スッキリしたでしょ?話して。
安心…した?』
「え…?」
桂にあてられて、驚くあたし。
「…うん。
でもどうしてわかるの?」
まだ涙はとまらない
『安心したから、なにか、嬉しいことがあったから…
悲しいことだけじゃなくて、こんなことでも、人は泣けるんだよ』
桂は…すごいね…。
こんなにすんなり、硬くなったあたしのココロを溶かしてくれる
まるで…母親のような温かい優しさで。
