しかし、暁さんの言霊に縛られた僕の身体は、そんな朦朧とした意識の中でもハキハキと進んでいる


そしてカギに手が触れる


無事たどり着いた安心感から、はっと恐怖で止まっていた息が吐き出された


『よーくカギもっとけよ。』


彼は僕に向かって言う


「はっ…はっ…………っえ?」


『涙ねぇ、嬉し涙じゃなくてもいんじゃねーの?』


そう呟いた彼は大きく息を吸い込んだ

「な…何を。」



刹那





キ−ンと超音波のようなものが部屋中に反響する


「…!!!!???」


あまりの高周波な音に頭が揺さぶられ、僕はなんとか防ごうと耳を塞ぐ


天井のガラスを見てみると人魚が苦しそうに悶えていた


そして




勢いよく、涙が―、滝のような涙が僕の上に降ってきた


「…!!!!!」


『まぁ、お前、死んでるかもしれねぇけどあとで会おうぜ。
下でな。』


そして壱さんを扉の向こうに突き飛ばし、自分も部屋から出て扉を閉めた


僕はゆっくりと上を見上げる


水はすぐそこにまで迫っていた



ああ、ダメだ




完全に途切れる意識の中、水が身体を叩き、ガラスが割れる音を耳にしながら、一つの物語が頭に入ってきたのだった