しんっと一瞬世界が止まった。

観客のひとも、優子も、
相手選手のふたりも、そして私自身も、
みんなその一瞬は止まっていた。

「あ…」

意外にも沈黙を破ったのは相手選手、
無口な榊原さんだった。

声を上げるわけでもなく、
ただひゅうひゅうと空気だけを
発して涙を流す榊原さんを前にすると
大声で喜ぶことは出来なかったけど
改めて勝利を実感した。

「只今の試合は
4ー3でこちらの勝ちです」

審判の声にコート越しに
お互いが頭を下げたそのとき