男がいた。 長身で体格が良く、街を歩いていても絶対に絡まれないような種類の男。 しかし、彼は街にはいない。行ったこともない。 深い森で隔絶された、小さな小さな村で、ひっそりと生活している。 彼は孤独だった。 村の人々は、彼を恐れ、疎んでいる。 そして嫌っている。 たった1つの身体異常を持っているために。 <トカゲ>――――それが彼のあだ名であり、名であった。