街を二人でゆっくり歩きながら、しばらく何も話せなかった。


「何があった?って聞いても、嫌だろうから何も聞かないよ」


勇真が、ポツリと呟く様に言った。


「勇真。ありがとう」


いつも冷静で、優しい勇真。


本当は、こういう人と恋をすれば、幸せになれるんだよね。


あれ?恋?


私は、竜二に恋をしてる?


ふと気付き、私の足は立ち止まった。


「どうした?愛美?」


「ごめんね、勇真。私、行く所があった」


そう言うと、私はあのクラブへ向かって、走り出していた。


「愛美!」


勇真の叫び声が、遠くに聞こえた。