「愛美、お前も逃げろ」

竜二は、寿を見つめたまま、私に言った。


「嫌…」


嫌よ。


絶対に、ここから離れないから。


「危ないだろ!早く逃げろ!」


今までに聞いた事がない大声で、竜二は叫んだ。


「何だ?竜二の女か?」


寿は、ニヤっと笑うと言った。


「じゃあ、ついでに女も刺してやるよ!」


狂った様に叫びながら、寿は包丁を突き出したまま、突進してきた。


その瞬間、竜二は私を思い切り突き飛ばした。


弾みで、思い切り後ろに倒れ込む。


「竜二!」


竜二は、寿と揉み合いになり、何とか包丁を奪おうとしている。


「愛美!早く逃げろ!」