迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*





甘える…?

これが?
…って言うか俺が?

意外な言葉に、思わず顔を上げてしまった。



「航くんって、いつも余裕って言うか大人びてるって言うか…こんなことするタイプじゃないから…」



言いにくそうに続けるみさき。


余裕どころか…いつも、かなり必死だったんだけどな。

そんなふうに思われているとは思わなかった。


まあ、そうなりたくて頑張ってたわけだから…
ある意味“成功”なんだろうけど。



「ほら、どっちかって言うと、いつも私のほうが甘えちゃってるでしょ?」


「そう…?」


「うん。だから、やっぱり何かあったんじゃない?」



“何か”か…


別に、昨日今日何かがあったわけじゃないし、

何よりみさきが心配するようなことは何もない。



「別に、何もないよ?」



にっこり笑って、
不安気なみさきにそっと手を伸ばした。



「ただの夏バテだよ。」



俺が変だとしたら、
その原因は……



俺自身の問題だから。