甘える…?
これが?
…って言うか俺が?
意外な言葉に、思わず顔を上げてしまった。
「航くんって、いつも余裕って言うか大人びてるって言うか…こんなことするタイプじゃないから…」
言いにくそうに続けるみさき。
余裕どころか…いつも、かなり必死だったんだけどな。
そんなふうに思われているとは思わなかった。
まあ、そうなりたくて頑張ってたわけだから…
ある意味“成功”なんだろうけど。
「ほら、どっちかって言うと、いつも私のほうが甘えちゃってるでしょ?」
「そう…?」
「うん。だから、やっぱり何かあったんじゃない?」
“何か”か…
別に、昨日今日何かがあったわけじゃないし、
何よりみさきが心配するようなことは何もない。
「別に、何もないよ?」
にっこり笑って、
不安気なみさきにそっと手を伸ばした。
「ただの夏バテだよ。」
俺が変だとしたら、
その原因は……
俺自身の問題だから。

