「なんで?なんで僕はダメなの?」



それは、何度目かの説得だった。

どうしてもやりたくて。

ダメだと言われても諦めきれなくて。

何度も何度も。
俺はお願いし続けた。

その度に、母さんはきちんと理由を説明してくれていたけど…



「……お兄ちゃんはやってるのに。」



それは決して、納得がいくものではなかったんだ。



「どうしてお兄ちゃんはよくて、僕はダメなの?」


「航…」


「みんな言ってたよ?
一緒にやればいいのに、って」


「……。」


「僕、新しいのはいらないから。全部、お兄ちゃんのお下がりでいいよ?
だから…「航!」



そこまで言ったところで、母さんは声を荒げた。


突然のことに、俺はびくっとして言葉を失って。


それに気づいた母さんは、ハッとしたような表情になった。


そして、



「ごめんね?航。」



やさしく、でも明らかに哀しげに。

俺の目線に合わせてかがみ込んで言った。



「航は、お兄ちゃんと同じことはできないの。」