迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*





「……はぁっ」


自分の部屋で。

ベットに倒れ込んで一息つく。

……やっぱり、落ち着くな。



生まれ育ったこの家。

20年間も暮らしているにも関わらず、

この“入れ物”自体に心が安まったことなんて一度もないけど。


“自分の部屋”って言う、この狭い空間は、別。

と言うか、
この家で、俺の居場所はここだけだから――







近所では“お屋敷”と称されるこの家。

所謂“旧家”の古びた日本家屋。

家族の人数に対して明らかに多すぎる部屋数。

庭を維持するために、毎月いくらかかっているかわからない。

“使用人”だっている。


端から見れば、何不自由のない暮らし。


だけど、
蓋を開けてみれば……


ひどく窮屈で気詰まりで、居心地の悪い“牢獄”だ。







「櫂?風呂空いたぞ!」



遠慮がちなノックと同時に聞こえた父さんの声。


住み込みの家政婦さんは、今は病院に付きっきりだから…この家には俺と父さんだけ。


主が不在の今、
少しだけ、家の中の空気が和らいでいる。