「みさきちゃんのご両親、2人とも迎えに来られないみたいなのよ。」



みさきが目覚めて。

点滴も終わって。


処方せんとか会計とか…いろんな手続きも済んで。

いざ帰ろう、となったとき。


母さんが困ったように俺に言った。



「…って言うか、
みさきちゃんが“連絡しないでほしい”って。」



2人とも仕事中だから。

迷惑も心配もかけたくないのだ、と。


……みさきらしい。



「さすがにマドカちゃんに来てもらうわけにはいかないしねぇ」



母さんはどこまで知ってるんだろう?

みさきの家庭事情、を。


マドカの母親とは、再会して以来連絡を取り合ってるみたいだけど…



「だから、送ってあげて?」


「…はっ?」


「タクシー呼んだから。
あんたがみさきちゃんの家までついて行ってあげなさい。」



ぼんやりと考えていた俺に、母さんの突然の提案。



「俺が…?」



だって、俺は…

普通なら二つ返事で引き受けるところだけど、さすがに今は…

こんな状況なのに?



「いいわね?」