迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*下*





「え…?」



母さんを見れば、まっすぐに真剣な瞳で俺を捉えていて。

誤魔化しはききそうにない。



「俺…は…」


「これまでのことを帳消しにして、もう一度やり直すつもりだった?」


「……っ」



正直、そこまでは考えていなかった。


ただ、みさきが無事なのかどうか気になって。

“子供”のことが気になって…


会いたくて。

確かめたくて…



「…そんな顔するなら、離れるんじゃないわよ。」



バチッと。

母さんの両手が、俺の頬を叩いた。



「な…何する…」


「大事なものは、ちゃんと守りなさい。離れちゃダメ。手放しちゃ…ダメなのよ。」


「え…?」



母さんを見れば、笑顔…なんだけど、どこか哀しげな表情で。

なんだか今にも泣きそうな…



「傍にいないと、守れないのよ。」


「母さん…?」


「傍にいないと、何かあったときに助けてあげられないの」



母さんが、何を思って言っているのかはわからない。

でも、なんとなく…

なんとなくだけど、
俺はアイツのことを思い浮かべていた――






「…それはそうと、
“身に覚えがある”のはよくないわよねぇ。」